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使ってみたら、やっぱり凄い。

リクエストを頂いたので、発売から既に3年半が経っていますが9000系DURA-ACEに関するインプレを。

手が小さいこともあり、元々はカンパユーザーでした。
シマノのSTIレバーは7800系まではヘッドが大きく飛び出ており、リーチが非常に長いのが苦手でした。
7900系はその握りの太さと変速・ブレーキの硬さから全く興味がありませんでした。

また、操作の官能性という面でもわざわざシマノを選ぶ必要は無いように思っていました。
カンパニョーロの指に直結したようなシフト感に対して、これまでのシマノは僅かな乖離感やチープさを感じさせていたというのが個人的な意見です。

が、9000系はあらゆる面で大きな進化を果たしています。
はっきり言って、これならカンパじゃなくてもいいなと思うほどに。




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■ST-9001

気がついたら9000から9001にマイナーチェンジしていた、でお馴染みのSTIレバー。
これまでのシマノからすればかなりのスリム化が果たされています。
特に指の又が当たる辺りが細く作られており、まるでカンパの現行型エルゴパワーのような握り心地。
ヘッドからブレーキレバーに繋がるカーブに人差し指と中指をかけると前傾姿勢を取りやすく、これもエルゴパワーのツノの部分みたいです。




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無段階のリーチアジャスト機能が付いているのも特徴で、ヘッド付近のボルトを締め込むとレバーが本体側に近づく(レバーが戻りきらない)ようになっています。

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僕はレバーを最大に近づけた状態で使っています。 
この状態では、カンパのエルゴパワーで上から握った時の指の掛かり方に非常に近い感覚が得られました。
これまでのSTIではレバーの縁に指がギリギリ引っかかるような感じだったのですが、9000ではしっかり指を掛けて握り込める感じです。

下ハンで扱う場合にはカンパのほうがレバーのカーブが自然でしっかりと握り込める感じがありますが、あくまで感覚のレベルで9000も全く問題はありません。
それよりも、シフト面で少しストレスを感じる事があります。
エルゴパワーでは「親指側のシフトレバーが下ハンで操作しにくい」といった指摘が多いですが、僕からすればむしろシマノのブレーキレバー側のシフトを下ハンで行なうのが非常に辛いです。
一度に数段シフトしようと思ってブレーキレバー側のシフトを押し込むと、手首のスナップに沿ってブレーキレバーが内側に来てしまい、シフト中にブレーキをかけてしまうのです。
シフト時に気をつければいい話なのですが、ブレーキが独立しているカンパに比べると微かな面倒臭さを感じます。 


使っていて特に驚いた部分が2つ。
1つ目は操作から受ける印象が非常に良かったことです。
勿論これはワイヤーやFD-RDなど変速系全体の生み出す感覚なのですが、STI単体でぽちぽち弄っていても、その音や指に伝わる感触は以前までのモデルよりずっと質感が高まったと思います。
カンパのような粘るような感覚とは違い、シャキッ、スチャッという、例えて言えばハリウッド映画で銃を操作している時の音、もしくは日本刀を鞘から出し入れする時の効果音のような、そんな操作感。
冷徹で正確無比なシフトをイメージさせるフィールでおもいっきり惚れ込んでしまいました。
ST-7800のようなアルミレバーモデルがあったらよりその触り心地を楽しめそうです。

こういった感覚的な部分はカンパの十八番だと思い込んでいたのですが、シマノはシマノの強みを磨き上げて独自の境地に至ったように思います。



2つ目は、シフトのストレスフリーさ(下ハン時の大レバー除く)。
これまでカンパを使っていて良いなぁと思った点の一つが、シフトのダイレクト感でした。
エルゴパワーの構造はレバー内部に横向きにインデックスレバーを入れたような構造になっているので、中指側の押しこめば押しこむだけワイヤーが巻かれます(3段分まで)。
また、親指側のレバー(リアであればシフトアップ)も同時に5段まで押し込めるので、自分の押し込んだ量に合わせてワイヤーテンションをリリースされる段数が決まるのです。
この感覚が慣れると非常に面白く、自分の指でワイヤーをどれだけ動かすか微調整しているというロマン的な何かと、指の動きとワイヤーが連動している反応のダイレクトさが心地よいのです。

一方でこれまでのシマノはブレーキレバー側のシフトこそ機敏でしたが、手前側のレバーは「押し込むと解除(リアならシフトアップ)の準備がされ、レバーが戻るとディレイラーが動く」というものでした。
この感覚がどうにもギクシャクしていて自分は好きになれずにいたのです。

9000では多段シフトこそ出来ないものの、(Di2では多段シフトも可)手前側のレバーを押した時の挙動が地味に改良されています。
というのが、これまでは何も起きなかった「レバーを押し込む」段階でRDがスプロケットのギア半分だけ動くのです。
これには感動しました…本当に!
元々9000系でレバーを押し込む距離が減ったなか、更にこの「半分先にシフトしておきました」は劇的にダイレクト感を与えてくれます!

ST-9001には本当に感服しました。
コンポーネントのあらゆる感覚が集中するレバー部分にこれだけのこだわりを見せたところに、シマノの本気を感じます。







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■駆動系(FC-9000/RD-9000/FD-9000/CN-HG900/CS-9000)

FC-9000については以前にもインプレを書いているのであまり多くは書きませんが、デュラエースの凄さを思い知らされる部品その2ですね。
デュラエースのクランクはシマノの誇るアルミ加工技術の結晶であり、他社がカーボンに移る中で様々な技を駆使してカーボンに匹敵する軽さと剛性を叩きだしてきた化物です(FC-7800Cという例外を除く)。


7900系のデュラエースが53-39で645g、9000系が53-39で618g。
ちなみにFC-6800は688g。スーパーレコードのクランクセットは603g。



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このクランクと組み合わさって素晴らしいシフティングを見せるのがデュラのFD。
ロングアームとなったことで顕著に性能が上がったのはシフトアップ。
これまでのトリム操作程度の力で、チェーンがアウターへと自然に駆け上がっていくような感覚は凄いの一言。
クランクのアウターリングの加工やチェーンの構造など、トータルで見た時の性能が完成されている感じ。



リアディレイラー側も同じで、シフトダウン側の軽さが素晴らしい。
ワイヤーを巻き取る為にそれなりに力が必要なはずのシフトダウンが非常にスムーズに行われ、何のストレスも無く変速が決まります。
リアディレイラーのスプリングテンションが79に比べ落とされていることも軽さの一因でしょう。
このシフトの軽さはブルベなどの長距離を走った時の手首周りの疲労感軽減にもかなり効きます。
ただし、この軽さ自体はデュラじゃなくてもいいかなぁ、という印象は拭えません。
105はともかく、68アルテでもワイヤーなどに気を使えば違いが分からない程度の性能は出ます(操作の官能性は別)。

そういえば79で無くなったFDのトリム操作が復活してましたね。
個人的には「俺操作してるぜ感」があるのでトリム操作有る方が好きです。
最高のストレスフリーはDi2におまかせで、機械式は操作感の向上を図ったんでしょうかね。


スプロケットに関してはあまり好きではありません。ロー側五枚がチタンになっており軽量化が図られていますが、明らかにスチール部分に比べて削れる速度が早いです。
CS-6800に比べて約50gの軽量化ですが、そのために短い寿命と三倍の値段(二万円)を納得できるかどうか。
僕には無理だったのでスプロケだけCS-6800に変えてあります。
デュラのスプロケはヒルクライム等の特別な機会に。






ギアの構成自体は好きです。
フロントのインナーに36tを入れるとなると、後ろで12tまで使えれば3倍で漕げるので90回転で大体34km/hになります。
インナートップは使えないので、36tで使えるスプロケはトップから二枚目まで。
つまり、11速になってトップに11tが入ったおかげで、36tのまま12tまで回せるようになりました。
インナーに入れっぱなしのまま34km/hまで回せるのは、ストップアンドゴーが多い市街地では結構便利良いです。




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■BR-9000

素晴らしい部品その3です。
何が素晴らしいかといえば、コントロール性能と引きの軽さ。
つまり、ブレーキに必要とされる性能全てです。 

 
「シマノといえばカックンブレーキ」
そう思っていた時期もありました。
いや、昔のシマノは確かにそうだったと思います。シューがリムに当たり始めると「シュルシュル当たってるなー」という感覚がなんとなくあって、そこから握り込むとギュンと制動力が立ち上がる感じ。 

こいつは違います。
握り込んだ分だけリニアに制動力に変換されている感覚が指に伝わってきます。
これまでのシマノブレーキが「10% / 60% / 100%」という三段階の制動力が選択できるアナログなブレーキだとすれば、このブレーキは「1%から100%までどれでもOK」って感じ。
いや、既存のブレーキに対して明らかに20%ほど制動力が上乗せされています。120%までOK。
エグザリットやカーボンリムで使うと更にその素晴らしさを確認できるのですが、アルミリムでも明らかにその性能差を感じることが出来ます。 
いやまあ、79のブレーキも結構良かったんですけどね。9000のブレーキは本当に凄いです。

引きもめちゃくちゃ軽いです。
これはワイヤーやレバーの組み合わせから出た性能だと思いますが、79時代のあり得ないゴリゴリ感とはおさらばです。
あ、でもエルゴパワー+Mavic SSCブレーキの組み合わせよりは重いです。





やっぱりデュラか、それともアルテか




9000デュラは凄いです。
あらゆる面で、使っていて全く不満がありません。
気になるのはワイヤーの寿命くらい。

じゃあ皆デュラ使えば良いじゃん、というわけにもいきません。
だって高いし。

カンパの上級グレードに比べれば馬鹿みたいに安いのですが、やはり気になるのは6800系ULTEGRAの存在。


簡単に比較出来るのは値段と重量ですよね。 

今回は定価で考えましょう。
9000 DURA-ACEのフルセットが約21万で、
6800 ULTEGRAのフルセットが約10万です。

重量は、
9000が1,978g
6800が2,274g

その差296g。
296g軽くするのに11万余計に払いますかね。
フレームで296g軽くしようと思ったら11万以上かかりそうなので重量を削る手段としてはアリ…なんでしょうか。
まあ1gでも軽くすることに心血を注いでいる人はSRAM REDに行きそうな気はしますが。

じゃあ性能面で迷う、というのはどうでしょう。
68で組まれたバイクも何台か乗ってみましたが、ホビーライダーが乗る分には性能はどちらも十二分にあります。
明らかに違うな、と思ったのは操作系のタッチとブレーキくらいでしょうか。
アルテの方が少しチープというか、操作していてパチパチする感じがします。
ブレーキはやはり絶対的性能でデュラの勝ち。平地でも感じ取れるくらいですから、ダウンヒルなんかで使ったら相当違うんじゃないかなぁと。



ということで、コスパと性能の中庸を取るなら、
アルテベースでブレーキをデュラに交換というのは良い選択なのではないでしょうか。
これなら14,340円の追加で38gの軽量化まで出来ますし、速さよりも優先されるべき"安全面"をより強固に出来ます。



しかし、僕個人としてはその他にもう一つ、クランクの交換を是非推したいです。
昔の記事で散々書きましたが、9000デュラのクランクの透明感、強烈な剛性感、脚に感じる刺激、そういった感覚はもう言い表せないくらい素晴らしいものです。
アルミクランクの至宝であり至高であると、僕は勝手に思っています。
価格差はおよそ二倍、27,000円ほどですが、それだけの価値がこのクランクにはあると思います。
(個人的に黒系の自転車に68アルテのクランクを入れたくないというのもありますが)
 
 





DURA-ACEの凄さ




CANYONの圧倒的に安い販売価格のおかげで僕のような乗り手が分不相応にも9000DURAのユーザーとなる僥倖を得られたわけですが、それで得た結論は以前と同じものでした。

「「 アルテグラで十分」とは言えない」。

デュラにはデュラの世界があって、それはアルテグラでは絶対に見えない。
ただそれに差額を出す必要があるかといえば、多分大部分の人には無い。
速く走るだけなら、ブレーキだけデュラにして差額で良いホイール入れたほうが速い。 間違いない。

だから「デュラとアルテなんてたいして違わないよ」って言うのは、性能面では事実、だけど別の面ではそうでも無かったりして。ロマンとか。
そこにお金を払っていいと思える人(多分競技というよりは趣味性の高い人)なら十分に満足出来ると思う。

フルDURA-ACEで組んだバイク、というだけでも価値が有ると思う人もいるだろうし。
僕みたいに、手や脚に伝わってくる感覚の繊細さに興奮して、ガチガチに硬いクランクから伝わってくる刺激の連続に思わずにやけてしまうような、そんな人もいるだろうし。

こんな製品を生み出す会社が自国に有ることを少し誇らしく思ってしまったりもするくらいに、良いモノ。


※こういったフェチより変速性能が欲しい人の為にちゃんと6870 アルテグラDi2が近い価格帯に用意されている辺りも素敵です。




次のデュラはどうなるんですかねぇ。
製品サイクル的にはそろそろのような気もしますが、78デュラのように6年間生き続けたモデルもありますから(あれは傑作すぎた説はある)どうなるやら、ですが今年のジロくらいには出てきそうな気もします。
次にやるとしたらもうディスクブレーキですよね。それでエンド幅を135mmにして、12sにしてみるとか。
油圧ピストンを機械式STIに内蔵するのは大変ですから、思い切ってDi2オンリーにしても良いかもしれません。

いずれにしても、次のデュラが本当に楽しみです。
時には失敗することもありますが、それでも次の時代を見せてくれる存在であることは変わりありません。
ただ、カンパも好きなのでイタリア方面も頑張って欲しいです。切実に。