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最愛のサドルについて。

Selle SMPのFormaというサドルを発売当初から5年ほど愛用しています。「消えるサドル」とか「三角木馬」とか言われるSMPですが、長々と使っているとメリット・デメリットやセッティングのポイントなんかが朧気ながら見えてくるのでシェアしようかと思います。
※セッティング関係の話は後半です。


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そもそも何が違うのか


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SelleSMPはどっからどう見ても他のサドルとは違う雰囲気を醸し出しています。特徴的なのは中心部に大きく空いた穴と、湾曲した座面です。
ロードバイクのサドルというと最初に頭に浮かぶのは平らで薄く軽量なサドルでしょうか。Selle ItaliaのSLRシリーズなんかはその最たるものです。

平らな座面というのは腰の前後への移動が楽ですし、骨盤を立て気味にして乗る分には座りやすいものなのでレースの場面では大きな支持を得てきました。


しかし、従来の平らなサドルにはえてして"痺れる"という問題点があります。これは体重の一部を会陰部で支えていることから起こることです。
股間の間の柔らかい部分をクッションとして使うのは、長時間ペダルに荷重をかけ続けられるプロ選手ならともかくロングライド志向のホビーライダーなどにはオススメできません。

※個人差あり。背骨の湾曲や柔軟性などによっては平らなサドルで痺れない人も。

こういった現象を解決するために溝ありのサドルを発売するメーカーもありますが、平らなサドルに穴を開けることは圧迫を改善するどころか悪化させることもあります。
何故なら丸いお尻を平らなサドルに乗せるとそれだけでどうしてもサドルとお尻の接触面積が小さくなってしまいますし、穴なしのサドルで接触を大きく請け負っていた会陰部の荷重が穴によって無くなった結果、より少なくなった接触点に荷重が集中し痛みが発生するからです。


そんじゃまどうしましょ、という話になるわけですが、ここでSMPの出番です。


SMPのコンセプトとしては、

①まず穴を開けて会陰の荷重を抜きましょう

②抜いた分の荷重を一部に集中させないために、お尻全体で支えましょう

という流れになるはずです。

SMPの大きくカーブした座面には、平面気味のサドルでは同時に触れることのないお尻の前部と後部が同時に接触します。
それにより荷重が一箇所に集中することが無くなり、穴を空けても快適に乗ることが出来るわけです。
それでいて平らなサドルより接触面は広く取れるため、上手く行けばサドルの存在を意識しなくなるまでストレスを低下させる事が出来ます。


SelleSMPのラインナップについて



SelleSMPはざっくり分けると高級なものと安価なものに分けることが出来ます。
安価な方は座面形状こそSMPですがパッドを盛りまくっているのでまた違ったタイプのサドルです。
今回話題にしたいのは主に高級の方です。
高い方には


①角が比較的角ばっており坐骨の置き場が決まっているComposite系統


②角が丸くなっておりCompositeより自由に座れるForma系統

の二種類の系統があります。

元々はComposite系統のみの展開でしたが2009年に新商品としてFormaシリーズが展開されました。
CompositeとFormaはパッド無しで、それぞれにパッドを盛ったものとしてEvolutionDynamicがあります。

※CompositeとFormaの詳しい違いについてはシルベストサイクルの記事が参考になります。

CompositeとFormaにはパッドが無いため快適性に劣ると思われがちですが、パッド付きのシリーズよりベースに使われている素材が柔らかくなっておりサドル全体でしなる構造になっています。
パッド付きの方は底づきしてしまえばむしろパッド無しモデルより硬い感触なので、形が決まってしまえばパッド無しの方が快適に走れると思います。

さらにパッドを増量したタイプのDrakonやTTモデルの Chronoなどもありますが割愛。また最近ではパッドをかなり厚くしたHellがお手頃価格のミドルグレードとして投入されており、こちらもなかなか良さそうな感じです。



SelleSMPのメリット・デメリット



インプレとでも言いましょうか。
SelleSMPを使っていてメリットだと感じたことは

①痺れない
②腰が安定する
③乗り心地が思ったより良い
④コーナリングが安定する
⑤前乗りしてもサドル高が低くならない


ということです。


とにかく痺れません。
600km走ろうがレーパン無しで乗ろうが股間部が全く痺れません。
他のサドルを使っていた時は100kmまでに何かしらの部位が痺れていたので、SMPに変えた当初はそれだけで驚きました。


サドル全体でお尻に接触するので、腰がホールドされる感じがあります。
これを利用して長時間の登坂などでトルク重視のペダリングを行なうことも容易ですし、腰を支持点として利用できることから初めて体幹というものを意識したのもこのサドルでした。


乗り心地は見た目よりずっと良いです。
柔らかいベースと変わった形状のサドルレールのおかげで大きくしなるので、突き上げなどはだいぶ緩和されていると思います。
ただししなりに頼りきった設計なので、例えばアダプタでレールを挟み込むタイプのサドルバッグを取り付けると快適性が低下している感じがします。


サドルのサイド部分に厚みがあるためコーナリングでおしりがエッジに引っかかることもなく横方向への移動が簡単に行なえます。
腰のホールド感と合わせて、コーナリング時の重心コントロールが非常に楽です。


SMPでは前に座れば座るほど座面が高くなります。
平らなサドルで前乗りをした場合、デフォルトの着座位置よりBBへの距離が近くなるのでサドル高が低くなったのと同じ状態になります。
しかしSMPでは前乗りするとサドル側が高くなるのでデフォルトの部分と同じ感覚でペダリングすることができます。



一方でデメリットも。
①前後方向への移動が大変
②シートピラーを選ぶ


わかりやすいデメリットとしてはこの前後移動の難しさが挙げられます。
これはサドル全体でお尻をホールドするという設計である以上はしょうがないのですが、例えば長時間前乗りしようと思うとサドル前面の傾いた部分に座らなくてはいけないのでちょっと辛いです。
勿論出来ないわけではないのですが、平らでノーズが長いサドル、例えばFizikのAntaresやSelle ItaliaのSLRに比べると明らかに座りにくさを感じます。


実はここが最大の問題で、シートピラーをかなり選びます。
SMPは固定時にレールが大きく傾いた状態になります。
この傾きが二つの面から問題になります。

まず、これだけ傾いているとヤグラによっては固定力不足を引き起こします。
例えばDedaの二本締めシートピラーではサドルレールとヤグラとの接触面が少ないために後ろに滑ってしまう事があります。
なるべく点ではなく面で固定するピラーを選ばなくてはいけません。

さらに、シート角によってはヤグラを大きく傾けることになりますが、シートピラー側でそれだけの角度をつけることを想定していない場合があります。
例えばCANYONのシートピラーは二本締めなのですが、傾けたヤグラがシートピラー本体に当ってしまい座面の平行を出しきれませんでした。

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これがシートピラー交換でどうにかなるならまだ良いのですが、ISPや専用シートピラーのヤグラが対応しきれなかった場合は目も当てられないので困った問題だなぁ、と思います。



セッティングに悩んだら



SMPはセッティング次第では天国にも地獄にもなるサドルです。
セッティングに迷った時、痛みが出た時などにいい結果が出た工夫を幾つか紹介します。

①サドルを下げる
お尻に圧迫系や擦れの痛みが出るようであれば、とりあえずサドルを下げてみましょう。
SMPは幅が広めであり、しっかりと腰をホールドします。
なので、サドルが高めの時にやりがちな「骨盤を傾けて長さをカバーする」行為がやりにくいです。
つまりサドル高の誤魔化しが効きません。
どれくらい下げると良いかですが、とりあえず踵をペダルに乗せて一周きちんとペダリング出来るくらいの高さから始めるのが良いと思います。
高めよりは低めのほうが故障も少ないですし。


②サドルを平行にする
SMPの平行は一番山になった部分同士を結んだ線を平行にする、というのは説明書にも書いてあることですが、これが結構大事です。
もし前後方向にきちんと座っている(ペダル軸に対して膝が真上にある)のに前下がりなセッティングになってしまう場合は、サドルが高すぎたりステムが長すぎる可能性があります。


③サドルを最大に引いてみる/前に出してみる
SMPの快適性は、実は前傾姿勢の角度に大きく依存しています(特に骨盤角度をコントロール出来ない人の場合は)。
前傾姿勢の度合いを強くすると快適性が向上する場合があります。
これを確かめる為に、とりあえずサドルを一番後ろまで引いてみましょう。
恐らくこれだけで相当前傾が増すと思いますが、もしこれが座りやすいのであればハンドルが高いorステムが短い可能性が見えてきます。
なので、踏みやすいサドル位置に戻した時に最も快適な前傾度合いを取れるようにハンドル側に手を入れてみましょう。下ハンを持ってテストしてみるのも手です。

ちなみにSMPをガッツリ後ろに引くと座面で骨盤を固定しながら反力で前に蹴りだす形になるので、体重をかけてパワーを出す乗り方は出来ませんがロングライドには非常に効果的な乗り方になる場合があります。


④シートピラーを変えてみる
身長やシート角によりますが、どうしても思ったような位置にサドルを持ってくることが出来ないことがあります。
自分の場合は73.5度のシート角にセットバック25mmのピラーではSMPを理想の位置に持ってくる事ができませんでした(サドルバッグのアタッチメントを付ける空間を確保したかったので)。

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なので、シートピラーをセットバック0mmのものに交換しました。
ちなみに自分が採用したのはFSA K-Forceです。
このピラーはヤグラの角度を十分に取ることが出来ますし、固定力も高いので一安心。
他にもThomsonのElite アルミシートピラーなどが評判良いですね。




⑤サドル/ハンドルをまっすぐ取り付ける
サドルやハンドル(ステム)がホイールに対してまっすぐついてないとお尻や足が痛くなる事があります。
SMPは腰を真っ直ぐ固定しよう、という力が強く働くサドルです。
例えばサドルが真っ直ぐついていないと腰(骨盤)が気がつかないうちにねじれていたり、逆にお尻が非対称に痛んだりします。
右側はお尻の前の方が、左側はお尻の後ろのほうが痛い、なんて人はサドルが右向きに付いているかもしれません。
また、ハンドル/ステムが真っ直ぐついていなかったりSTIが左右違った高さについていたりすると、上半身がひねったようになりますよね。
どちらかの肩を前につきだしたような形になると腰の方もそれにあわせて引っ張られることになります。
これが平らなサドルだとひねったままでも意外と乗れるのですが、SMPは腰を掴んでしまいますから色んな違和感が発生することになります。
なので、とにかく自転車に対して真っ直ぐ乗れるようにしましょう。


まとめると、痛くなったら サドルを下げて 平行にして 前後に大きく動かしてみましょう!
そして、自転車に真っ直ぐ乗りましょう!ということです。




SMPを買うべきか?




もしあなたが平らなサドルを使っており、そのサドルで痺れや痛みを感じているなら試してみてもいいでしょう。
とはいえけして安いサドルではありませんから、テストサドルを探してトライしてみるのもいいと思います。
結果的に選んだサドルがSMPでなくても、自分が平ら系サドル派なのか湾曲系サドル派なのかが分かるだけでもサドル選びが楽になるでしょう。

ここ数年で穴あきサドルが見直されており、SMPを無理に選ばなくても色んな選択肢が選べるようになりました。


例えば座面湾曲系でより前乗りしやすいものであればSpecializedのRominやPowerを選ぶことが出来ますし、
平ら系でも血流確保を優先したければSelle ItaliaのSLR SuperflowやFizikのVersusシリーズも選べます。


誰にでもフィットするサドルなどというものは存在しないと思いますが、しかし幸運な事に僕のサドル選びの旅はSMPで終わりを迎えました。
見た目も値段も一風変わったサドルですが、試してみる価値はあると思います。 






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