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自分の中で史上最高のアルミクリンチャー。

スペック面など、客観的な内容に関しては Ksyirium SLR - 概観 - の後半部分を御覧ください。
ここでは所謂インプレを記述していますが、インプレは相対評価でしかなく、フレームやタイヤによっても大幅に印象が変わることをご了承ください。
ちなみに自分の中での比較対象はZonda(2014) / RS80-A-C24(2012) / Racing Zero(2008/2014) / Shamal Ultra(2013) / Bora One 50(2015)です。



もうとっくに2016モデルも発表されていますが、気にせず2015モデルをインプレします。
ちなみにキシリウムSLRの定価は22万円。頭がおかしい 非常に高価な価格ですので、ライバルはBORAなどのカーボンディープになるでしょう。
そういった観点でも興味深いホイールです。アルミクリンチャーにこれだけのプライスタグを付けるのですから余程の自信があるのかな、と不思議に思っていました。




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とりあえずはタイヤも変えず、ポンと履いて乗ってみます。



ゼロ加速からそろりとひと踏み…






ぎゅるんっ



という強烈な反応。






そのまま加速していくと、クランクでホイールをそのまま回しているような猛烈なダイレクト感でカツンカツンと回転します。
おー楽しいホイールだ。


これはアレですね、レーシングゼロ
BORAやRS80の、スチールスポークに絶対的なリムの軽さを合わせたスカスカ感ではなく、ペダリングに対してガツンガツンと容赦なく反応する、ホイール全体の構造が生み出す剛性による圧倒的刺激。
思わずテンションが上がります。
足でスプロケを蹴っ飛ばしてるみたい。


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 そっくりさんなお二人
 


巡航速度まで上げて走っていると、新たなことに気が付きます。

レーシングゼロやシャマルウルトラに乗っていると、サドルの下方に円盤形状の一枚板があるような縦剛性の高さを感じます。それはホイールという構造体全体が絶対的な剛性感を提供している証なのですが、逆を言えば段差や路面のちょっとした起伏に対して敏感に反応し衝撃をフレームに伝えてしまいます。

しかし、キシリウムSLRは乗り心地が良い
これは後輪に採用されているトラコンプテクノロジー、すなわち引っ張り方向へのテンションがかかっていないカーボンスポークの柱によるものだと思います。

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反スプロケ側に配置されたカーボンスポークは、お互いを引っ張り合うことで成り立っている通常のスポークと大きく違った力の掛かり具合のようで。
もしくはカーボンという材質そのもののおかげかもしれませんが、回転方向への剛性は総アルミスポークのホイールと同じかそれ以上に高く感じるのに、路面から上がってくる縦方向への衝撃は明らかに少ないのです。

こりゃー恐ろしいホイールだな…というのが第一印象でした。 

 


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シチュエーションごとに



平地の巡航は、普通。
速度を上げていくと、まあこのリムハイトのホイールならこんな感じでしょ、という程度の伸びです。
快適性や反応性を棚に上げて巡航維持の観点のみで見れば、レーシングゼロとも変わりませんし、ゾンダでもあんまり変わらない気がします。
この点ではBORA ONE 50の魔法の絨毯のような、ホイールが半透明になったような感覚にはかないません。
フロントはキシリウムなのでスポークはエアロ形状です。
全面カーボン丸スポークのR-SYSフロントよりは空気抵抗が低く巡航面では楽なのではないかと思いますが、ISM4Dで滑らかにされたリムでも実感できるほどの空気抵抗の差はありません。

巡航速度から更に踏み込んでいっても、BORAのような高速域に入ってからの伸びは感じられず。
掛かり自体は良いので速度変化に対する反応は超優秀なのですが、結局のところ地脚が無ければ一旦上げた速度の維持はできません。
BORAのほんのりアシストされている感が恋しくなります。



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ちなみに、Mavicを批判する際に良く言われるハブのベアリングですが、特に回転が悪いと感じることはありませんでした。
確かにいつも通る下り坂を下った際に、USBベアリングのカンパホイールよりは回らない気はしました。
しかしそれはペダルを一回転させて加速させてしまえば良い話ですし、むしろメンテナンス性と耐久性を重視した構造には好感が持てます。
一応非接触型のベアリングに交換しましたが、悪天候に対するリスクを負ってまでやらなくても良かったかなぁ…とちょっと後悔しています。
ちなみに後輪のフリー側ベアリングは特殊な径なので、セラミックスピードの専用品以外では交換できませんのでご注意を。



ブレーキ性能は超優秀!
一言で言えばスーパーコントローラブル。

ブレーキレバーを引く力に合わせて制動力の立ち上がりが自然に変化します。
弱く当てればゆっくりと効き、段々と強く握っていけばそれに連動して制動力が上昇していきます。
そして一気にブレーキをかけるとつんのめるほどの制動力が瞬間的に立ち上がります。

このホイールのブレーキの効き方はアルミリムというよりはカーボンリムに近いと思いますね。
カーボンリムもエグザリットも、リム側ではなくブレーキシューが削れる事で制動しているので感覚が近いのかもしれません。
ブレーキ音も似てます。ぴゅーーーんって感じ。



ブレーキの制動力変化がスムーズでコントローラブルなホイールはいくつもありますが、エグザリットの凄いところはその制動力を発揮させるために必要な力が非常に少ないということ。
キシリウムSLRに慣れてから他のホイールに履き替えると、ブレーキを効かせる為により多くの握力を必要とすることに驚きます。
例えば、BORAである制動力を出すのに10の握力が必要だとして、キシリウムSLRで同じ制動力を出そうとすると6程度です。

ブレーキ操作に必要な握力が少ないのは長距離でとても楽です。
ブルベではブレーキも疲労元の一つですし、握力を節約できるこのホイールは助けになります。






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登坂性能は、非常に高い。
登坂は加減速の繰り返しなので、この掛かりが良いホイールは踏み込む度にスキップするかのように坂を駆け上がります。
ダンシングしても腰砕けせずしっかりハンドルを返してくれますし、RS80で感じるような一瞬もたつく感じも皆無です。
特に斜度がキツくなればなるほどその性能を発揮しますね。
実際、ヤビツ峠のタイムを比較すると激坂区間はキシリウムSLRが速く、緩斜面区間はBORAの方が速くなっています。



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ダウンヒルも優秀ですが、ちょっとした癖がありますね。
というのも、カーボンスポークを使った後輪の横剛性の高さに対して、前輪が追いついていないんです。
ブレーキングを済ませてコーナーに入ると、前輪が一瞬後輪の動きに遅れるらしく微妙に前輪側が外に膨らんだ後に戻ってくる感じがします。
というか、後ろから見ると実際にそうなってました。
アルミスポークで組まれたキシリウムの前輪も相当横剛性が高いのですが、それを上回って後輪がしっかりしているのだと思います。トラコンプに比べればアルミスポークも微妙にたわんでいるのだ、と初めて思い知りました。
特徴として一旦把握してしまえば大したことはないですが。

それよりもブレーキの性能の高さから握力に十分余裕を持って下れるのでとっても楽です。
ただWTS(ホイールタイヤシステム)としてパッケージングされたMavicのタイヤ、イクシオンプロ パワーリンクのグリップが微妙に低く、コーナー手前での減速時にロックすることが多々有りました。





このタイヤについてなのですが、フロントがグリップ重視、リアが低転がり抵抗重視として作られています。
前後共にケーシングが127TPIのナイロンで、ケーシングは柔らかくゴム側で性能を発揮するタイプのようです。
特にリア側がボリュームある作りで、乗り心地の向上を狙っている印象があります。
フロントに比べて硬いリアに対して、タイヤでフォローするという設計なのかもしれません。
WTSはきちんと機能しているような気がしますね。

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見た目も格好良い

ただしタイヤを外してみると決して厚くはない作りです。アルトレモRの薄さに似ているかなぁ。
25cで210gという軽めのタイヤなので無理もないのですが、耐パンク性にはすこしばかり不安を覚えます。
用途によっては交換したほうがいいでしょう。




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一通り乗った後、タイヤを自分のスタンダードであるPanaracer Race A Evo2 25cに交換してみました。
標準で組み合わされているイクシオンプロと違い前後で同じタイヤなので、よりホイール単体の個性が判るように。

結果、明らかにリアの快適性が低下しました。
タイヤでフォローされていた分が無くなったせいか、フロントとリアの差が激しくなったように感じます。


レースAはケーシング側がとてもしっかりしており、同時にラバーも固めの印象があります。
Mavicのイクシオンプロから換装すると乗り心地は低下しましたが絶対的なグリップが上昇した感じです。 
結果としてダウンヒルでの微妙なグリップ不足も解消され、いよいよこのホイールが好きになって来ました。

 


現代のホイール



ホイールは、フレームの進化に合わせて変化するものだと思います。
以前の記事でも書きましたが、フレームの後三角はカーボンフレームが登場してから十年間ちょっとで快適性が随分増したはずです。
何故なら後三角を構成するパイプは四本あり、そのうちチェーンステーに動的性能を任せることでシートステーが快適性を演出するために大きく役立っているからです。
一方で前三角、特にフォーク〜ヘッド〜ステムのラインはそうはいきません。 
何故なら前輪はフォークのみで保持されているからです。
快適性を優先してフォークの剛性を低下させることは、ダンシングやダウンヒルなど高負荷がかかる状況を考えればあり得ないことです。
フォーク、そしてそれを支えるヘッド部を大きく柔らかくするわけにはいけないですから、どう足掻いても後三角と同じというわけにはいきません。

昔のフレームは、前三角も後三角も固かったはずです。
例えば僕が持っているLOOK 585も後三角側が相当な固さでした。
それはチェーンステーとシートステー両面をガッチリと固く作ったことで生まれる固さです。

現代のフレームでは、前述のとおり後三角がどんどんと快適になっていっています。 
それに前三角が追いつくことが難しいのであれば、ホイール側でそれを補正するしかありません。
 
BORAやレーシングゼロをLOOK 585で使っていた時には前後同じ程度の固さに感じていたのですが、CANYON Ultimate CF SLXに履かせると急に後ろだけ超快適になってしまいました。
道の段差を乗り越えた時、前輪側で感じる衝撃に対して後輪側が明らかにふんわりしているのです。

これをキシリウムSLRに変えると、前後の衝撃がほぼ同じに戻ります。
前が固く後ろが快適なフレームに、前の方が柔らかいホイールを入れたために補正されたのでしょう。
現代のホイールは、フレームに合わせて味付けを変えているんだろうなぁ、と思いました。





まとめ




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キシリウムSLR(キシリウム125)は目立った欠点のない、普通で、最高のホイールでした。
アルミクリンチャーに関する以前の記事でも書きましたが、このホイールはアルミクリンチャーに求める性能を全て高次元で兼ね備えています。
アルミリムのホイールでこれ以上のものを作るのは大変でしょうね。
22万円という数字に納得は出来ませんが、理解は出来ます。これだけの反応性と快適性を兼ね備えたホイールって、なかなか想像できません。
しかし安く購入できれば15万円前後ですから、まさしく納得です。



2016年のキシリウムシリーズは、一部カーボン化してしまいました。
Mavicの至宝エグザリットを捨てて重量面で大きなメリットのないカーボンリムを選択する理由があるのか判りませんが、完組ホイールを20年近く作ってきたメーカーのやることなので期待して待ちたいと思います。

 


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