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キシリウムSLRが素晴らし過ぎたので、10万円超のホイールを考えてみたいと思います。
 


ここに記載することは全て個人的な意見であることをご了承ください。




ロードバイクのホイールには、価格帯ごとにベストバイと言ってもいいホイールがあるように思います。




4万円以下なら Shimano WH-6800



6万円以下なら Campagnolo ZONDA




8万円以下ならShimano RS81-C24


もしくは、Mavic Ksyrium Elite。 

コストパフォーマンスがいいホイールとなると、自ずと候補が決まってきます。

しかし、10万円を越えた領域ではどうでしょうか?
初めてその領域でホイールを買おうとする人の大半は「ディープリムを夢見て」ではないでしょうか?
確かに、10万円台であれば


FastForwardのディープリム群や、

Mavic Cosmic Carbonシリーズが選択肢として入ってきますし、
20万円に足を踏み込めばそれこそよりどりみどりですよね。
BORAやZIPP404、コスカボ40cなどなど…



しかし、あえて提唱したい。


ホビーライダーはこの値段域だからこそ、アルミクリンチャーを選ぶべきだと!!


 
 




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何故アルミクリンチャー?


アルミクリンチャーをオススメするために、アルミクリンチャーのメリットとそれ以外のデメリットをそれぞれ紹介します。


まず、アルミクリンチャーのメリット。


①クリンチャーリムであること

クリンチャーです。当たり前ですが。
クリンチャーがエントリー〜ミドルクラスを中心に主流の現代、クリンチャーのパンク修理は出来てもチューブラーのパンク修理(orタイヤ交換)はやったことがない、という方が殆どではないでしょうか。
たとえロングライド中にパンクしたとしても、クリンチャータイヤならチューブ交換で殆どの場合は対応できてしまいます。チューブラータイヤであれば携行性の悪いタイヤを身につけなければいけないところです。 
一度のパンクならいいですが、複数回のパンクに備えようとするとやはりチューブの携行性が優れています。

また当然のことながらタイヤもクリンチャータイヤが使えます。
クリンチャータイヤは選択肢が非常に多く、チューブラータイヤに比べて安価です。 
例えばContinentalの GP4000シリーズは、クリンチャーが7,000円、チューブラーが14,500円です。
クリンチャーの場合はこの値段にチューブ分が追加されますが、いずれにせよかなりの違いです。 

 
②アルミであること

…これも当たり前ですが。
人それぞれかもしれませんが、カーボンホイールだとどうしても気を使ってしまいます。
車からの跳ね石などが当たってしまうなんてこともありますし、 
輪行するにしてもフレームやクランクに変なあたり方をしないよう気を使います。 
アルミクリンチャーなら多少の衝撃はあまり気にせずホイホイ使えますし、雨でもへっちゃらです。


③思ったほど性能差が無い 

誤解を招きそうな表現であることを覚悟した上で言いますが、ホビーライダーにとってはカーボンディープもアルミクリンチャーも殆ど性能面の差が無いと思います。
正しい言い方としては「全ては乗り手との相性と使用するシチュエーションである」といった具合ですが、そこを言っては元も子もないですね。

スペックに限って話を進めると、まずホイールの性能を決めるのは空力リム重量でしょう。


空力




空力はリムハイトが高ければいいんだろ!と思いがちですが…

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TOUR からの抜粋です。
横軸が風向き、縦軸が空気抵抗です。
これを見ると、ディスクホイールが圧倒的な性能だったり、一部のホイールは斜めからの風で"加速"していることも分かったりしますが、興味深いのは24mmハイトのホイールの方が50mmハイトのホイールより空力性能に優れている、なんてことが起こったりするということです。
つまり、空力性能はあくまでホイール毎に固有の性能であり、リムハイトが高ければ絶対に空気抵抗が低いんだ!とは言えないということです(勿論一定の傾向としてはあります)。

また、50mmハイトのホイールが効果を発揮する速度域にどれだけいられるか?というのも問題になってきます。
勿論40km/h巡航余裕だぜ!という方にはいいのですが、30km/h程度ではリムハイトが20mmほど変わった程度では大した違いは無いでしょう。
向かい風ではそれなりに効果を発揮してくれるのが救いですが。
リムが高い=誰にとっても速いという式はあまり説得力が無いようです。




リム重量





さて、リム重量について。
リム重量は外周部の重量なので、ホイールの機動力を確実に決定づけます。

では、リム重量ってどんなものでしょう。

カーボンチューブラーで24mm前後
だいたい270g (ENVE ROAD 25 TU:274g / Shimano WH9000-C24-TU:250g)

カーボンチューブラーで50mm前後
だいたい390g (ENVE SES 3.4 45Aero:380g / Campagnolo BORA:400g)

カーボンクリンチャーで24mm前後
だいたい400g (Mavic Ksyrium Pro Carbone SL:405g / Fulcrum Racing Zero Carbon:400g)

カーボンクリンチャーで50mm前後
だいたい460g (Reynolds Attack SLG 41mm:445g / メカニコ NSL 50 CL 50mm 460g)

アルミクリンチャーで24mm前後
だいたい410g (Mavic Ksyirium SLR:400g / Fulcrum Racing Zero 405g)



上から行きましょう。
うーむ…ローハイトカーボンチューブラーが圧倒的ですよ。
これはWH9000-C24-TUを買うしかないですね…

と思ってしまうのですが、如何せんある程度登りに特化したジャンルなのでとりあえず置いておきます。
しかし、チューブラーであるという点を気にしない方なら最強ホイールでしょう。




カーボンディープチューブラーはどうでしょうか。
カーボンディープといえば誰もが…とまでは言いませんが、大多数の方は一度が憧れる存在ではないでしょうか。
リム重量は重くても400g程度。 細めのリムだと380g程度のものも多いです。
50mmのリムハイトでもその重量ですから、カーボンの軽さがかなり効いていますね。
ちなみに、バルブエクステンダーとチューブラーテープ(orセメント)の重量は念頭に入れておく必要があります。数十gは追加されるでしょう。シーラントを入れるなら更に追加。
チューブラーであるというネックはありますが…
しかし、それにしてもホビーライダーが一度は買う価値のあるホイールだと思います。 
楽しいですよ、このホイール群は。





カーボンクリンチャーは最近勃興してきたジャンルですね。
ローハイトのカーボンクリンチャーはその黎明期と言ってもいいでしょう。
しかし…このジャンルには少々否定的です。
というのも、そんなに軽くないんですよね。

Ksyrium Pro Carbon SL T Disc F
画像引用:road.cc

例えば、先日発表された2016 Ksyrium Pro Carbone SLです。
コスカボ40Cと同じく、金属のインサートが入っています。 

2016年追記:アルミインサートは無くなりました。

  Mavic Ksyrium Pro Carbon SL-C rim construction
画像引用:road.cc

リム重量は405g。
405gって、アルミのキシリウムSLと全然変わらないじゃないですか!
コスカボ40Cは安心して使える40mmのカーボンクリンチャーということでそれなりに理解できますが、このProは…カーボンリムの見た目とブレーキ音を楽しみたい人向けなんでしょうか?
ちなみに£1,350ということで、約26万円…です。

Racing_Zero carbon_Front-hf


密かに期待していたRacing Zero Carbonもリム重量400gだったとのことです(のむラボさんの記事)。 
これが350gとかならキシリウムやレーゼロを超えて超軽量クリンチャーとして君臨出来たと思うのですが、如何せん400gでは…何か際立ったメリットがあるんでしょうか?(ご存知の方がいれば教えて下さい)
なお、この辺りの技術はディスクブレーキが導入された頃に活きてくるんじゃないかとは思っています。
ブレーキの熱処理を考える必要が無くなりますから、カーボンクリンチャーとディスクブレーキはかなり相性良いですよね。
なので、今後に期待のジャンルです。





SLG-main


ディープカーボンクリンチャーはどうでしょうか。
ここは非常に判断の難しいところです。
リム重量460gと言うと、アルミであれば5万円台で購入できるモデルに近い数値ですが、リムハイトが全然違いますからね。
スポークを短く出来るメリットもありますし、見た目もインパクトが大きいです。
うまく買えれば普段使いのベストバイになりうる存在です。

しかし、この記事のためにディープカーボンクリンチャーを色々と調べていて気がついたんですが、リムテープを使用するリムが多いですね。
つまり、リム重量に+20gほどは見込まなくてはいけないでしょう。
この重量をどう考えるかは人次第です。

bora-clincher-rim

それと少し脱線しますが、BORA ONE 50 クリンチャーを眺めていて思ったこと。
BORA  ONEのチューブラーモデルは1265gです。
一方、クリンチャーモデルの重量は1485g。
一見「50mmのクリンチャーにしては軽いなぁ!」と思うのですが…

チューブラーとクリンチャーでリム幅も同じ。リムハイトも同じ。
スポークやハブも同じものでしょう。
となると…1485-1265=220g。
220gの重量はそのまま前後のリムに行っていると考えられます。
BORA ONE 50のリム重量を仮に旧型と同じ400gとすれば、
BORA ONE クリンチャーのリム重量は510g…
そんなアホな、と思わなくもないのですがBORAクリンチャーはリムテープが要らないっぽいので、500gあってもおかしくなさそうな気も…
リムが500gと聞くと一気に買う気が冷めてしまうような気がします。
勿論、ディープリムなので重量の配分はローハイトほど悪い感じではないのですが。



そしてアルミクリンチャーです。
ようやくですよ!ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。 
リム重量は400g前後。
安いものでは一万円以下で買えてしまうようなアルミクリンチャー、そこに10万円以上で売るほどのコストをかけているわけですから色んな工夫が凝らされています。

mavic-mtb-wheel14-08

例えばShimano WH9000シリーズではアルミリムの一部を極薄に作り、そこをカーボンラミネートで補強することで一定の強度と軽量化を行っています。MavicやCampagnolo/Fulcrumはリムへの切削加工で極限までダイエット。 MavicはISM4Dと呼ばれるリム全面削りまでやってのけました。
個人的には、この「制約下でやれること全部やったぜ」感がとても好きですw


ここまで読んでいただければ、アルミクリンチャーがリム重量において大きく劣っていることはない、ということが判って頂けたかと思います。

じゃあどれがいいの?という検証をしてみましょう。



高級アルミクリンチャーのベストバイを探す 




まずはShimano WH9000-C24-CLです。
リム重量およそ380g(+リムテープ)、ハブは勿論デュラエース。
スポークはこの値段域では珍しくスチールスポークです。重量は1,360g ほど。
下位グレードにリムを共用している(と言われる)RS81シリーズがあります。

このホイールは「10万円以下のアルミクリンチャーを気合入れて激軽に作った」ような乗り味です。
スチールスポークなのでめちゃくちゃ硬いわけでもありませんし、そもそもリム剛性自体も高いとは言えないでしょう。
だからこそホビーユーザーには最高のホイールである場面が多いです。
例えば、河川敷でサイクリング。
例えば、仲間と一緒にヤビツ峠でタイムアタック。
例えば、400km超のロングライド。  
どんな場面でもこのホイールは役に立つでしょう。
コレ一本あれば殆どの場合は履きっぱなしでいいはずです。
ただし、獰猛さが無いので退屈かもしれません。







獰猛さが欲しければCampagnolo Shamal UltraFulcrum Racing Zeroにしましょう。
リム重量は400gほど、リムテープは不要です。 
ハブはさすがのカンパ製、メンテナンスが簡単で手入れを怠らなければ猛烈に回転します。
スポークはアルミ。重量は1,450g ほど。

10万円超のアルミホイールの凄さを知りたければ、この2本はかなりのオススメです。
多少の乗り心地の差はありますが、殆どの部品が共通なのでどちらも同じ方向性です。
アルミスポークの採用とカンパの設計思想から生み出されたこのホイール達は、まるでディスク形状の板に乗っているかのような縦剛性と、後輪を直接足で回しているかのような反応性で乗り手を楽しませてくれます。
僕自身レーシングゼロを一本持っていますが、未だにその刺激的な乗り心地には惚れ惚れしますし、たまに無性に乗りたくなります。


写真 2014-04-27 14 51 30


固めの乗り心地なので長距離には比較的向いてないホイールだったと思うのですが、近年のフレームの快適性の進化や25cタイヤの装着などで十分ロングライドも対応できるレベルになってきました。
自転車に興奮を求める人、アルミホイールを突き詰めたらどうなるのか試したい人におすすめです。

使ってて高揚します。マジで。ロマンロケット。
  



Mavicはアルミの上位モデルが豊富です。



Ksyrium SLE



R-SYS SLR 

などありますが、今回は



Ksyrium SLRをおすすめします(最近乗ってるから)。
詳しくはそのうち別記事にしますが、
リム重量およそ400gでリムテープ不要、ハブはシールドベアリング。
スポークはフロントとリアのフリー側がジクラルスポーク、リアの反フリー側がカーボンです。重量は1,355g。 

こいつはとにかく凄まじいです。
Racing Zeroを上回る反応性、WH9000-C24-CLよりも軽量、そして乗り心地が何故か良い。
一概にカーボンスポークのおかげと言えるかどうかは怪しいですが…もしかしたらリムハイトが少し高め(フロント25mm/リア26mm)でリム幅を旧型比でワイドにしたのが効いているのかも。

そして最大の利点がブレーキ性能。


もう超最高。


ブレーキ性能が高いと言われるBORAと同じか、いやそれ以上にコントローラブルでありながら、小指一本でリアブレーキを操作してもロック寸前まで急ブレーキ出来るほどの制動力を誇ります。
これを可能にしているのがエグザリット2と言われるリムへの加工。

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リムの表面に特殊なPEO処理と言うものを施すことで、アルミリム全体が硬くなる、らしいです。
それを行なうことを前提に、リムのブレーキ面が洗濯板のようになっていますね。

普通のアルミリムではブレーキシューがアルミリム面を削ることで制動するわけですが、エグザリットではリム面はほぼ削れずブレーキシューが削れることで制動力を発揮します。
これはカーボンリムと同じ方向性なのでシューも殆ど同じものみたいなのだけれど、当然これだけの溝があれば良く止まるわけです。
カーボンリムでのブレーキのような「ヒューーーーーン」という音をさらに大きくした感じのブレーキ音がとてもかっこ良いです。
リムが真っ黒だと締まって見えるのもGOODですね。 

勿論お値段も凄まじいことになっています。
なんと22万円。おいおい、ちょっと頑張ればBORA買えるぞ、という値段ですが…
両方持っている僕は、外走の八割でこのKsyrium SLRに乗っています。
それはやっぱりクリンチャーだからですね。
あと硬くて楽しいです。
こんないいものがあるのに、なんでわざわざリム面をカーボンにしたKsyrium Pro Carbonなんて出すんですかねぇ。そこのところは発売されてから色々調べてみたいところです。

2017年1月追記:リアホイールをR-SYSとしたキシリウムSLRは廃盤となったため、
Maicのアルミクリンチャー最上位はキシリウムProエグザリットとなっています。




じゃあベストバイはKsyirium SLR?







いえいえ、Mavic最大のウリであるエグザリットですが、これと同じPEO加工を施したリムを用いたホイール、
campagnolo-shamel-mille-wheelset

Shamal Mille


Racing Zero Nite

この2つが僕の考えるベストバイ。

Campagnolo/Fulcrumも、エグザリットという名前ではないですがそれぞれのトップモデルにPEO処理を採用したホイールを出してるんですねー。
勿論Mavicとはブレーキ面の溝の形もブレーキシューも違うので全く同じというわけではありませんが、PBOで全面アルミスポーク、リムも400gちょっと(420g弱)ですし、ハブはRecordクラスのカンパハブ…
そしてなんといっても価格が18万円。 
Ksyrium SLRより4万円も安いわけです。定価で。
レーシングゼロカーボン(26万円)の立ち位置が…




これを考えると、この2つのうちのどちらかがアルミのベストバイだと思うのですが…


実際のところ、ホイールは見た目や乗り心地の嗜好、フレームとの相性などが強く影響しますから、万人におけるベストバイなどというものは無いでしょう(元も子もないですが)。
なので、僕が人にアルミの上級ホイールでオススメを聞かれたら、ここまでしてきたような説明をします。 
その上で、予算の程度や、見た目が好きになれるかどうかなどで選ぶと楽しく乗れるかと思います。 
機会があれば試乗出来るとより良いですね。
ホイールは入れ替えが楽なので仲間うちで取っ替え引っ替えしても楽しいです。
 

以前僕がBORAについて書いた記事を読んでいただければ、カーボンディープチューブラーがどれだけ楽しいものか、少しは判って頂けると思います。 
しかしその上で、あえてアルミの上級モデルという選択肢もあるよなー、とKysirium SLRに乗ってしみじみと思ったので、こんな記事を書いてみました。

というのも、レースで1位を取ることに心血を注いでいるわけでもなく、自転車に乗ること自体を楽しみ、その激しさに興奮し、たまには長距離をひーこら走り、そして弄って、眺めて楽しむ。
そういった楽しい楽しい "趣味としての" 自転車生活には、なるべくストレスが少ないほうがいいな、と。
チューブラーはめっぽう速いかもしれませんが、ロングライドでは少しだけ不安を抱えて走ることになります。
カーボンホイールも楽しいですが、取り扱いがちょっとだけ怖いです。
そんな時、過激で頑丈で、楽しくガシガシ乗れるアルミホイールって本当に良いな!と改めて思ってしまったのでした。


カーボン全盛期ですが、アルミホイールも捨てがたい。
楽しく乗りましょう。


関連:それでもカーボンクリンチャーを買った理由



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