IMG_6303

1000kmほど乗ってみたのでインプレッションを。
※個人の感想です
最近はサークル内も機材が充実してきたので、結構いろんな自転車に試乗しています。
とはいえいわゆるツール・ド・フランスを走っているような最新型バイクにはほぼ乗ったことがないので、ここに書いてある事はそういった最新型バイク(Cervelo R5やCannondale SuperSix Evo、Specialized New S-works Tarmacなど)に共通して当てはまることかもしれません。
あくまでこれまで2000年代のバイク(Look 585Ultra)に乗ってきた人の感想としてお読みください。


→7000km乗ってからのセカンドインプレッションはこちら


sponsored link




まずはいつものホイールで


完成車付属のホイールはMavic Kysirium SLRですが、フレーム単体の感覚を味わうためにホイールを交換します。
Look 585Ultraで常用しているCampagnolo Bora One 2015Boraについての記事はこちらを装着。
クランクは585Ultraと同じDura-Ace FC-9000、ペダルも同じPD-7900なので脚への感覚の影響は殆ど無いと思います。
コースは走り慣れた平地のCRとちょっとアップダウンがある周回コース。


走りだして最初に感じるのは少し低めに感じる重心。
軽量フレームと聞いて連想しがちなヒラヒラ感、不安定さが少なくどっしりとした感覚がある。
低速での脚ごたえはシルキー。De rosa Idolで感じる薄いプラスチックのようなフィールでも、Ridley Fenixの肉厚で重厚な感覚でもなく、おそらくいちばん似ているのはKuota K-UNO。
ピーキー過ぎず鈍感すぎず、路面を滑るように走ります。






速度を上げていくと、脳が混乱し始める。







何だこのバイク?気持ち悪い…!! 

 



今まで乗ったロードバイクの中で、最も"完璧"に近い自転車、という言葉が頭をよぎります。
というのも、

快適なのに、硬いのです。




ロードバイクに求められる能力は、反応性と快適性。
ライダーのパワーを逃さず活かす為に硬くすれば快適性が低下し、振動を吸収して快適性を上げようと思えば反応性が低下する。
そういうトレードオフなもの…だと思っていたのです。

ところが、このフレームは違います。 

乗り心地は非常に良いです。先に上げましたがK-UNOの空飛ぶ絨毯のようなフィールやRidley Noah RSに似た振動吸収性、さらに585Ultraが持つ強力な振動減衰性の全てを兼ね備えていると言ってもいいでしょう。
Ultimate CF SLXは多少の舗装荒れを無かったことにし、大きな段差もライダーに何の痛みも与えないほどの振動吸収性を持ち、にもかかわらずその衝撃を一瞬で収束させ次の瞬間には何事もなかったかのように安定しているのです…こんなことがあり得るのかと。

ただし、前後で微妙に快適性の差異があります。フロントの快適性が100だとすれば、リアの快適性は120です。
同じ段差を前輪と後輪で乗り越えると、後輪の振動の方がより小さくなっています。
これは前半分の振動はしっかりと作られたフォーク〜ヘッド周りのみを伝達してくるのに対し、後ろ半分は細く柔軟なシートステーが振動に対処し、より高い快適性を生み出しているためだと思います。

※振動吸収性は振動自体の大きさを低下させる性能をイメージしてください。
ある段差を越えた時に、振動吸収性が高いフレームの方がより衝撃の強さを抑えられるということです
角の取れたマイルドな〜といった感覚はライダーに伝わるまでにフレームで振動を吸収しているということです。柔らかい材質ほど優れていることが多いです。

※振動減衰性は振動の収まるスピードの違いです。
ある振動が自転車に伝わった時、それをどれだけの速さで消し去るか。
振動の強さ自体を弱めてくれることは無いのですが、自転車の安定性や路面状況の伝達などに影響します。
パヴェのような、連続的に荒れた道を走った時に、振動減衰性が悪い自転車に乗ると振動がどんどん重なっていってバタバタし始めますが、振動減衰性の高い自転車では路面の状況に合わせてぴったりとフレームを安定させる事ができます。
硬く良質なカーボンが得意にしていることが多いです。




なのに、高ケイデンス下でもトルクをかけた走りでも明らかに硬く力を逃さない感覚もあります。
軽くダンシングしてみてもどこかがたわむような感覚は一切なく、デュラエースのクランクがそのまま延長したかのような、異常な硬さを持っています。

とは言え、585ultraのようなキンキンとした牙剥き出しの硬さではない所が凄いところ。
トルクを掛けずに回している間は、確かに芯がしっかりと硬い感じはあるのですが、脚に伝わる硬さは表面にゲルをまとったかのようにソフトでスムーズ。
ところが力をかけていくに従ってバイク本来の硬さが表面に出てきて、しっかりと全力で受け止めてくれるのです。不思議な感覚。

うーん…ドクターグリップというシャーペンのグリップ、といって判るでしょうか?w
表面をツンツンしている分には柔らかいのですが、中には強固な芯材が通っていて、ぐっと力を込めてやるとその芯材の存在が判る、そんな感じです(むしろ謎)。

ガツッと雑に踏み込めば585ultraを上回る瞬発力を持って飛ぶように加速しますが、脚に感じる反発は585ultraと違って微妙な優しさを含んでいます。 
例えば585ultraに120の力をかけると、余った20の力を脚に激しく押し返してくる感覚があります。しかしUltimate CF SLXは100を推進力に変えつつ余った20をフレームの中に留めておいて次の一瞬に放出してくれるような奇妙な感覚が。
雑なペダリングを平均化して繋いでいってくれるような不思議なフィール。

この二種類の性能、快適性と硬さが両立している…とってもとっても奇妙な感覚なのです。
完璧すぎて、気持ち悪い!
 

IMG_6829





キシリウムSLRでヒルクライムへ


IMG_6629

次に、完成車付属のキシリウムSLRを履かせヤビツ峠へ向かいました。
246沿いを自走しヒルクライム/ダウンヒル性能も確認します。 

ヤビツ峠までの平地の高速巡航は非常に安定していました。
246の荒れがちな路面でも585Ultraに比べ疲労感が少なく、快適に走行できます。

ここでひとつ気がついたことですが、キシリウムSLRに履き替えたことで前後の快適性のバランスが改善されていました。
というのも、キシリウムSLRのリアはカーボンスポークを使ったR-SYSと同じものであり、このリアホイールは前輪に比べ縦剛性が高いのが特徴です。
つまり、後輪側がより快適なフレームに、後輪側がより硬いホイールを入れることで硬さが平均化され、前後がより纏まった感覚が得られるのです。
なるほど、これがキシリウムSLRを装着している理由か、と納得しました。


IMG_6584


ヒルクライムに入ると、バイクの絶対的な軽さが 発揮され、飛ぶように坂を登れる…
と思いたいものですが、現実はそうはいきません。
ダンシング時の取り回しや激坂区間での速度維持などは楽になりましたが、自転車が1kg弱軽くなったところで結局はエンジンの差が登坂では決定的な差ですね。
しかし、ロードレース的な走りでは話は別です。
ある程度いっぱいいっぱいのところからもう一段階踏み込んだ時の加速や、 ダンシングで一気にスパートをかけるような動きの際にはバイクの軽さが身体をアシストしてくれているのを如実に感じました。
これは剛性の塊のようなフレーム下半分のおかげだと思います。
リズムに乗って登るというよりは、超高ケイデンスで筋肉に反発の負担をかけず駆け上がるか、逆に大トルクでゴリゴリ登るのに向いているフレームだと考えます。

ダウンヒルは素晴らしいものがありました。
上下異型でガッシリとしたヘッド周りのおかげか、この細いフォークにも関わらずコーナリング時の嫌なたわみやゆらぎは一切なく、ブレーキングにおいてもしっかりと物凄い制動力を発揮します。
ブレーキングに関してはデュラエースのブレーキキャリパーとキシリウムSLRのエグザリット2を差し引く可能性があると思いますが、逆に言えばそれら(デュラ+エグザリット)の組み合わせが生み出す膨大なブレーキングパワーをフレームが全て受け止めているのですからすごい話です。
あまりにブレーキ能力が高いため、ブレーキ開始とともに身体が前につんのめってしまうほどの猛烈な減速を行なうことが容易に可能であり、しかもそれをしてもバイク自体が完全に安定状態にあるのです。

ただし、キシリウムSLRに付属していた後輪用タイヤ、Yksion Pro Powerlink…これがいただけません。
コーナーにおけるグリップは高く、また快適性も非常に優秀なのですが、ゴムの柔らかさに依存したタイヤのようで、高速域から一気に減速しようとすると簡単にロックします。
後日Panaracer RaceA Evo2を履かせ同じ下りを走った際は一度もロックしませんでした。
このバイクとホイールが産む制動力に対応するためには、タイヤはRaceAやContinental GP4000S2のようなハイグリップタイヤに交換するのがいいでしょう。





コーナリング
は弱アンダーステア。
曲がらない、というほどでもないのですがフロントの剛性の高さ故か重心の低さ故か、キツいコーナーでは意識的に体重を移動させてあげないといけません。
この辺りはこれまで弱オーバーステア気味の585Ultraに乗っていたので余計曲がりづらく感じるだけかもしれませんが。
どちらにせよ、体重を乗せてしっかり曲げてあげれば何の不安もなく安定して曲がっていくので十分な性能だと思います。



ブルベで走る


IMG_6436

ブルベにも持ち込みました。

BRM425 北関東400
BRM523 足尾300

ここまで書いてきた事の繰り返しになってしまいますが、快適性能の高さが際立っています。
特に400kmを走った後の身体の疲労度は明らかに軽減されていました。 
楽に走ろうと思えばその用途にもしっかりと答えてくれるバイクです。
最小限の操作で動いてくれる9000系のSTIのスムーズさも腕への疲労を抑えてくれます。
ブルベにおいて車重が軽いということはたいした優位にはならないのですが、個人的には「この車重ならウェアを一枚余分に持ってもいいか」と思うことが出来るので心理的余裕につながっています。
自転車自体が軽ければそれだけ荷物を多めに持てますからね。


ファーストインプレッション総括


IMG_6464

同期のK-UNOと


僕がこれまで乗ったことのある自転車の中で、最も完璧に近い自転車はKUOTA K-UNOでした。
振動吸収性と振動減衰性に優れ、かつ硬さを失わず高い運動性能を持ったバイクです。
しかし、Ultimate CF SLXはそれを超え、本当に"究極の"自転車でした。
もっさりとした感覚や不快な振動などネガティブな要素を一つも感じさせず、俊敏な運動性と快適性を併せ持つオール5の優等生のような異次元の存在。
そう言わせるほどに強烈なファーストインプレッションでした。
こんな自転車があっていいのか、と。


あえてマイナス面を上げるとすれば、その完璧さが故に個性が無いというか、尖ったところが無いのは人によっては欠点となるでしょう(僕にとってはマイナスです)。
レースで勝つためであるとか、ブルベを走り切るための道具としては完璧なバイクですが、趣味の乗り物としては少し魅力に欠けるかもしれません。

IMG_6300

その点で言えば、アッセンブルされている9000系デュラエースとの相性は抜群でした。
滑らかで軽く小指一本でも変速できる機能美に溢れた9000系はこのバイクにピッタリです。
逆にカンパのグループセットで組んだ場合には、カンパの官能性にフレームが追いつかずちぐはぐした感覚にとらわれるかもしれません。 

IMG_6828


以上、"インプレッション(印象)"に溢れた記事となりました。
べた褒めになってしまいましたが、CANYONからは一切何も貰ってませんよ(いや頂けるなら頂きたいですがw)。
以後、なにか気がついたことがあれば別途記事にしていきたいと思います。 

これまでのUltimate CF SLXに関する記事は↓からお願いします。

→フレームの概観などの記事はこちら

→フレームの設計思想に関する記事はこちら

→購入後に変えた部分についてはこちら

→7000km乗ってからのセカンドインプレッションはこちら