自分を実験台にしてやってみた。

僕は長距離が嫌いだ。具体的に言うと、30kmくらい走ると飽きる。

正確には、目的のないロングライドが大の苦手。ブルベはイベントなので多少の高揚感もあり、別の話。


「2013年にSRを取る」ということを目標にしたのが2012年の12月。

それまで走った最長距離は確か140kmかそこらだったかと思う。200kmでも未知の領域。

決意してからとりあえずネットで色々と調べてみたけど、ブルベを走り切るために必要な練習といったものは具体的には無いようだった。ブルベの練習はブルベを走ることでしか成し得ない、という感じ。

しかしブルベの競技性を考えた上で何か出来る事があるはずで、そこにピンポイントでマッチするトレーニングをとりあえず継続してみようと思い立った。

そこからSR取得までの約10ヶ月の間、そして現在に到るまでどのようなトレーニングを行ったか、その効果はいかほどのものだったのか、僕自身を使って実験してみたので書いてみる。







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■トレーニングに必要なもの


1.心拍計


とりあえずこれが無いと始まらないと思う。

心拍計がブルベ対策に重要な理由はこの後書く。

安いものだとCATEYEの心拍計単体のもの(腕時計みたいなやつ)があるみたいだけど、混信が多いとの話も聞く。

サイコンとの複合型では、僕のオススメは間違いなくGarmin。
ANT+対応で後々の拡張性も確保できるし、ワークアウト機能(高機能なトレーニングタイマーのようなもの)を使えばいちいち画面を見なくても練習できる。ポラールやCATEYEも良いものなのだろうけど、画面の表示領域が電卓のように固定されている事、GPSとコースガイド機能の有無、値段に大きな差が無い事、などからやっぱりGarminがいいかな。

オススメはこの辺り。


互換性の高いANT+対応でソフトストラップのものが◯。



2.三本ローラー


あってもなくてもいい。

僕みたいな面倒くさがり屋には必須。ボトル用意したらあとはiPhoneから音楽聴きながら乗れるのは非常にありがたい。強度のコントロールも容易。

詳しくはそのうち書くかもしれないけど、ローラー台があればパワーメーターがなくてもある程度の強度管理ができる。

ウェアを着込んで実走する時間がある人にはあまり必要ないかも。

でも三本ローラーを乗り込むと自転車の重心なんかが見えてきてバイクコントロールが上手くなるのであったほうがいいかも。



オススメは三段負荷で静かなElite ARION MAG。
ミノウラは負荷装置を後付できますが、負荷が安定しないようでイマイチ。
 

以上。




■何故心拍計なのか(パワーメーターでなく)

車で考えてみる。

心拍はエンジンの回転数を示すタコメーターに近い。

自分の使える最大心拍数に対して「どこまで無理をしているか」という数値が出てくる。

そしてこの数値は、その時の体調や外的要因を反映する。

徹夜すると普段より10〜20bpm高めに心拍が出たり、ブルベ後半に疲れてくると心拍が上がりにくくなったり。

一方、パワーメーターが示すワットは自分が出している力の指標だ。

エンジンの馬力のようなもの。

体調が良かろうが悪かろうが、自分の脚は◯◯ワットを◯分間維持出来る(はず)、という事実は変わらない。

レースではこれが大事だ。集団に食らいつくためにFTPが◯◯ワットでなくては勝負にならない、とか、ヒルクライムでこれだけのタイムを出すためには◯◯ワットを一時間維持できなくてはならない、とか。


ブルベという競技の特性を考えてみる。

ブルベは持久戦だ。そして、レースではない。一番にゴールする必要はない。

自分の調子やらを織り込んだ上で、なるべくエコに走るのがブルベ攻略の要。

自分の脚がどれくらいの力で今ペダルを踏んでいるか、という数値はあまり必要ではない。

それよりも、体全体でどれくらいの無理をしているか(していないか)を知りたいわけで、心拍数はその点パワーメーターより指標として優れているのではないかな?と個人的には思う。

例えば、元プロで今は日本中のブルベを走られている三船監督は「平地では最大心拍の70%、登りでは75%を維持するように走る」という(ランドヌール vol.1より)。

600km先のゴールまで淡々と維持できる心拍数を維持しながら、その心拍数でも完走できるように休憩時間等をマネジメントすればブルベは誰でも走りきれるはず(実際にはそう甘くない)。

まあ、お金があれば両方つければいいと思う。




■何故トレーニングをするのか


上で「淡々と維持できる心拍数を維持しながら、その心拍数でも完走できるように休憩時間等をマネジメントすれば」と書いたが、根本的にその心拍数圏内で完走できる程度のスピードが出せなくてはいけない。

「最大心拍の70%を維持出来たけどタイムオーバー」といった事になっては本末転倒。

あと、やっぱり登りはトレーニングしないとキツい。

ブルベの鬼門は登り。完走を左右すると言っても良い。(僕は登りが無いと飽きるので有ってくれないと困る)

そのために心拍トレーニングを行い、有酸素運動域で一定の速度を保てるようにする。


■で、なにすりゃいーのよ


メディオをやろう。


…と書いてすぐに「あーメディオね」という人は多分この記事を読みに来ないと思うので、心拍の基礎からざっと書く。

list
 


一つグラフを書いてみた。

右の%は「最大心拍数の何%か」を示す。最大心拍数の算出法は…とりあえず220-年齢で。
 

このように、心拍数域はおおまかにZone1からZone5まで分けることが出来る。

このZone分け自体が「主観的なキツさ」をベースにしているので、なかなかこれだという数値を指標とすることは出来ないのだけれど、目安としては十分。

このなかでZone3と呼ばれている領域が有酸素運動のみで活動出来る限界領域ということらしい。

そして赤線を跨いでZone4に入ると、有酸素運動の補助として無酸素運動が始まる(ここで注意したいのは、有酸素運動が無酸素運動に切り替わるということでは無いということ)。


ブルベではなるべく有酸素運動領域で長く走りたい、というか可能であればZone3までで抑えたい。

では、Zone3までで走り続けるにはどうしたら良いのか。

答えは簡単。

心拍をZone3より上に入れない=Zone3までで完走に十分な速度を出す

ということ。


Zone4やZone5はレースなどで相手のアタックに対処するとか、逃げを決めるとか、そういう時に使う分野だから、捨ててもいい。

それよりも先ずZone3を鍛えていけばいい。

そう考えたのが12月の僕だ。


そのために選んだのが先にあげたメディオ


メディオの簡単な説明としては、Zone3である程度の時間走り続けることで有酸素運動の枠を拡大させる(Zone3で維持できる強度を高める)ということ。

僕の場合は15分間Zone3を維持する、ただそれだけ。


Zone3で維持できる強度を高めるということは、同じ心拍数で以前より速く走れるということ。

図で言えば、赤いラインがじわじわと上に上がっていく感じ。

ということは、裏を返せば同じ速度を維持するために必要な心拍数は当然下がる。

例えば、ロードバイクを買ったばかりのころは30km/hで息を切らしていた人が、一ヶ月も乗ると30km/hに慣れてきて、そこそこ余裕で走れるようになる。

これと同じことがより高い強度で起こる。有酸素運動の上限を伸ばしてあげることで、中間域で余裕を持たせてあげるのがこのトレーニングの目的だ。



■本当に効くの?


効く。

例えば、今年3月のブルベでマザー牧場の登りを走っていた時、一緒に走っていた先輩は170bpm、僕は160bpmだった。
この10bpmは大きい。仮に最大心拍数が同じとすれば、僕は有酸素運動圏内(Zone3)にいるが、先輩は無酸素運動域(Zone4)に入っているわけで、これが長く続けば続くほど消耗の差は大きくなる。 
 

といっても言葉だけでは嘘臭いので、僕が一年半トレーニングしたデータを出してみる。

なお、練習頻度としては週に1度から3度、一日の練習時間はだいたいアップ5~10分、メディオ15分、クールダウン5分。

3度練習できる週はそのうち一日をメディオからより高い強度の練習に変えてZone4をつっついてみたりしていたが、頻度としては多くない。

メディオ9、その他1の割合。
有酸素運動能力は一週間放置すると下がり始めるそうなので、最低でも週に一回は乗るようにした。 
 

トレーニング環境は三本ローラー、エリートのArion Mag 負荷は1。

使っているタイヤ等も全て同じ。


※下のグラフを見るとメディオ前後にアップとか別のトレーニングがついている。
 ただし、数値データはメディオの15分だけを取り出した。
 つまり、純粋に15分間の数値がどれだけ変動しているかを観測している。
 心拍のブレは大抵HRセンサーの不調が原因。

2013 


1/11


Ave 34.2km/h

AveHR 160bpm

0111

3/11



Ave 34.4km/h

AveHR 159bpm

0311

6/19


Ave 35.9km/h

AveHR 156bpm
(この日のデータはメディオ区間のみ。HRセンサーが序盤不調) 

0619


8/8


Ave 36.2km/h

AveHR 160bpm

0808


11/8


Ave 36.5km/h

AveHR 161bpm

1108


2014


1/17


Ave 37.1km/h

AveHR 161bpm

0117


3/12


Ave 38.1km/h

AveHR 158bpm

0312


6/18


Ave 38.6km/h

AveHR 156bpm
0618


…とまあ、これで一年半分。
センサーの不調などで結構数値がばらついていたので、なるべく綺麗なデータを抽出してみた。

じわじわと伸びている事がわかる。
一年半で4km/hほど。
これは逆に、今34.5km/hを維持しようとすればほぼZone2と3の境目程度に心拍を抑えられるということ。 
つまり、一年半で赤線部分がZone一個分シフトしたことになる。

さらに、メディオの説明には中々現れない副次的要素がグラフに出ている。
それはリカバリースピード。
台形となっているメディオ区間が終わった所で、クールダウンに入ってから心拍数が130bpm前後に落ちるまでの時間が明らかに速くなっている。横軸の縮尺がバラバラなので分かり難いが、1.5倍くらいにはなっている。
これはかなり大事なことで、ブルベなどでよく見る細かなアップダウンやだらだらと続く登坂での緩急で回復しやすくなる。
より身体に余裕を持って走ることが出来るわけだ。



■メディオをやってみようという方へ
無理せず自分にアジャストして行うことをおすすめする。
15分が適当な長さだとは思うが、キツければ最初は10分でもいいし、余裕があればもっと伸ばしてもいい。

注意すべきことをいくつか。
脚を先に使い切らないようにケイデンスをあまり落とさないこと(90〜100がいいと思う)。
外で行う場合は周りに注意すること。
最大心拍数は個人差がかなりあるので、自分の身体と相談すること。
可能であればLTパワーの測定等でメディオ域を厳密に出すこと。

ちなみに、メディオの強度指標としては15分継続したあとで5分ほどのインターバル(軽く流す)をいれ、その後にもう一度15分メディオをやってみて、一回目と二回目の平均速度に大きく差が無い程度が良いと読んだことがある(一回目の15分でヘロヘロになるような強度ではキツすぎということ)。




週二回、一回40分程度の練習でも続ければ伸びる。
趣味の範囲でコツコツ楽しめるくらいがちょうどいいのだ。 
 



 

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